第007回 刑事弁護人が負う真実義務と誠実義務の衝突について

刑事弁護人は、当然のことならが、被疑者・被告人の利益(更生)を第一に考えて弁護活動を行います。そのため、刑事弁護人は、自らの 良心や信念を優先させるのではなく、被疑者・被告人のために最善を尽くすべき誠実義務を負うとされています。

一方で、刑事弁護人といえども、被疑者・被告人の刑罰が軽くなるのであれば何をしてもよいというわけではなく、積極的に真実をゆがめるような行為をしてはならないとして真実義務を負うものとされています。

この誠実義務と真実義務の各々の内容をどう捉えるかにより、状況によっては、両義務が衝突してしまうことがあります。

例えば、人を殺したことを認めている被告人が、刑事弁護人に対し、「裁判では、やってないことにしてくださいよ~。」、「僕の友達が嘘の証言をしてくれるので、アリバイ作りも完璧ですよ!」などと述べていた場合、刑事弁護人が被告人の要望とおりに無罪を主張することは、真実義務に違反することになるのではないかという問題が生じます。

今回の放送は、刑事弁護人が負う真実義務と誠実義務に関するお話です。

今回の放送では、刑事弁護人の活動が犯罪行為に該当すると判断した裁判例が存在するとお話させていただきましたが、同裁判例は、以下のとおりですので、興味のある方はご参照下さい。

1 千葉地方裁判所昭和34年9月12日判決
上記は、弁護人が被疑者・被告人のために証拠を偽造し、証人に偽証させる行為は、証拠隠滅罪や偽証罪に該当すると判断した裁判例です。

2 大審院昭和5年2月7日判決
上記は、被告人が犯罪行為を行なっていない身代わり犯人であった事案において、刑事弁護人は、被告人に対し不当な訴追が行われた場合には、被告人の意思にかかわらず被告人が刑事手続において有する正当な利益を擁護すべき地位にあるとした上で、刑事弁護人の活動が犯人隠避罪に該当するとした裁判例です。

この裁判例における刑事弁護人は、被告人以外の人物が犯人であることを認識した上で、真の犯人による捜査機関への出頭を妨げ、被告人の自分がやったとの虚偽の供述を漫然と放置していたようです。

なお、本来、刑事弁護人は、守秘義務を負いますが、この裁判例では、被告人の正当な利益を保護する職責を果たすため必要であるならば、業務上知った他者の秘密を漏洩しても刑法134条の秘密漏洩罪の違法性が阻却されるとしています。

1 個のコメント

  • 古い映画ですが「それでも僕はやってない」という
    痴漢冤罪事件を描いた作品が自分には衝撃的でした。
    最近だとPC遠隔操作事件で多数の冤罪被害者を生み
    当然、身に覚えのない人達が「やりました」と自白。
    片山被告人は1年以上身柄を拘束され、接見禁止まで
    付けられ家族等に限定した一部解除も認められず。
    片山被告人が犯人かは分かりませんが、証拠として
    提出された検索履歴によるとPC遠隔操作事件の報道を
    数千回も閲覧したことになっている等、おかしな部分
    が多々あるみたいです。これが所謂「人質司法」かと。
    弁護人の立場から見た場合、依頼者の利益が最優先かと
    思いますが、やっていないのに「やりました」と自白し
    出られたとしても犯歴(前科・前歴・微罪)は残ります。
    そして何より捜査は終了し、真犯人は野放のままです。
    やはり、やっていないなら23日間「やっていない」と
    通すべきではないでしょうか?
    また、作成する調書は口述したものを入力しますが
    誘導に注意すること。そして調書は隅々まで目を通し
    心象を悪く見せる書き方になっていないか確認します。
    例えば「遊び人風のB」の様に印象操作されていたら
    「遊び人風とは言ってません。削除して下さい!」と。
    納得できるものでない限りサインしません。
    そういう意味でも、自分だったらやっていないのに
    「やった」と認めること自体しないと思います。
    依頼者の利益も大切ですが、そもそも罪を認めることが
    利益と言えるでしょうか?また、真犯人を野放しにする
    ことは社会的に大きな不利益と言えないでしょうか?

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