弁護士放送第8回では建築紛争についてお話させていただきました。
その中で、建築された建物の床の傾斜について、どの程度、床が傾いたら不具合として認められるかを決める客観的基準はないとお話させていただきました。
上記につき、リスナーの方より、3/1000以上の勾配の傾斜が存在した場合には不具合と認められると聞いたのですが・・・。」とのご指摘受けました。
確かに、「3/1000、もしくは、6/1000以上の勾配の傾斜が存在する場合には不具合として認められる。」との指摘がなされることもあるのですが、同指摘は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第70条に基づき規定された「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」(平成12年7月19日建設省告示1653号)に基づきなされていることが多いです。
上記の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」には、3/1000以上の勾配の傾斜が床に存する場合には、直ちに構造耐力上の問題が存在すると判断されるわけではないものの、構造耐力上主要な部分に不具合が存する可能性が一定程度存すると解され、また、6/1000以上の勾配の傾斜が床に存する場合には、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高いと解されると規定されています。
一見すると、上記基準は、床傾斜が不具合に該当するか否かについての基準であるようにも見えますが、よく読んでいただけば解るとおり、上記基準は、床傾斜が存在した場合に、構造耐力上主要な部分に不具合(例えば、柱や壁が足りない等)が存する可能性が一定程度存することを示しているにすぎず、床傾斜そのものが不具合であるか否かを示す基準ではないのです。
なお、建物は、施工当初より施工誤差の範囲内で傾いていることがありますし、建築後も、不可避的に発生する程度の地盤の圧密沈下、木材のたわみ、乾燥・収縮等の原因により傾斜することがあります。
そして、居住者の意識として傾斜を感じるのは、5/1000程度の傾斜であるとされていますので、6/1000以上の傾斜が存在する場合には、具体的状況にもよりますが、床の傾斜そのものが不具合に該当するおそれがあるものと判断されます。