特定危険指定暴力団工藤会トップの野村悟氏が、現役暴力団トップとして初めて死刑判決を受けたことが報道されています。
判決後、彼に対して接見禁止決定がされたとも報じられていますが、接見禁止決定とは、何でしょうか。

そもそも接見とは?

接見は、刑事訴訟法39条1項に定められており、その内容は、身体の拘束を受けている被告人が、「弁護人」や「弁護人となろうとする者」と、「立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」、すなわち、面会したり、物を差し入れたり、手紙のやりとりをしたり、といったことができるとされています。

また、刑事訴訟法80条により、「39条第1項に規定する以外の者」とも接見、物の授受を行うことができます。この条文に基づいて、被告人は家族や恋人などと接見することができるのです。

接見禁止決定の概要

接見禁止決定とは、勾留された被告人が、勾留されても尚、罪証隠滅(すなわち証拠隠滅)や逃亡をするおそれがある場合に認められるものです。刑事訴訟法81条に規定されています。

これは、とくに暴力団関係者の犯罪などにおいて、勾留されている被告人が、接見した仲間に対し、自らに代わって、罪証隠滅をするよう指示したり、逃亡の協力をするようはたらきかけたりすることを防ぐための制度です。

接見禁止決定がされた場合、刑事訴訟法39条1項に規定する者、すなわち、弁護人または弁護人になろうとする者、以外とは接見をすることができなくなります。

本件で考慮されたであろう事情

本件は、暴力団のトップを被告人とする事件であり、その組織力から当該暴力団関係者による罪証隠滅等が行われるリスクが想定される場合も考えられなくはないところです。

また、野村悟氏が、判決言い渡し後、裁判長に対して「生涯後悔するぞ」などと発言したことが報道されていますが、この発言があったことも、接見禁止決定の判断にあたって考慮された可能性があります。「生涯後悔するぞ」といった発言は、脅迫の意図を感じさせるものであり、裁判長に対してのみならず、関係者を畏怖させるものであると考えられます。

そうすると、とくに、事件の証拠となる証言をしてくれる証人を保護することで、証人を脅迫して証言を被告人有利に変えさせること(罪証隠滅)を阻止する必要が生じます。

このために、本件では、被告人の接見を禁止し、被告人の仲間によって、証人(証言)が脅かされることを阻止するため、接見禁止決定がされたと考えられます。

まとめ

接見禁止決定とは、罪証隠滅や、逃亡を阻止するために認められるものです。
本件では、被告人が暴力団トップであり、脅迫の意図を思わせる発言もあったことで、被告人が仲間を通じて証人の証言を変えるようはたらきかける(罪証を隠滅する)ことを阻止することが強く要請される事案であったことから、接見禁止決定が認められたものと考えられます。
尚、接見禁止決定は事案それぞれの事情を考慮して判断されるものであり、この記事で検討したことは、あくまでも報道内容から推測して考えたものにすぎない点、ご了承くださいね。