Podcast: Play in new window | Download
Subscribe: RSS
人を殺した場合には、刑法上、殺人罪で処罰される可能性があります。では、殺意をもってナイフで被害者の心臓を突き刺したが、実は、数分前に被害者は既に死亡していた場合にも殺人罪は成立するのでしょうか。いくら数分前に死亡していたとはいえ、殺意をもってナイフで心臓を突き刺した以上は殺人罪で処罰されるべきなのでしょうか。 人を殺すつもりでナイフを心臓に突き刺したと思いきや、よくみると、それは人ではなく人形だった場合はどうでしょう。今回は、殺人罪の成立にかかわる条件関係に関するお話です。
刑法上の犯罪のうち、結果の発生が要求されるものを結果犯といいます。
今回の放送で問題となる殺人罪は、刑法第199条において、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定されていることからも分かるとおり、人を殺したとの結果の発生が必要な結果犯です。
そのため、先ほど述べました殺意をもってナイフで被害者の心臓を突き刺したが、実は、数分前に被害者は既に死亡していたといった事例において、犯人は、果たして被害者を殺したと評価できるのかが問題となるのです。
この事例でいいますと、数分前に被害者が死亡していたからといって、犯人は、ナイフで心臓を突き刺すような危険な人である以上、殺人罪を成立させるべきであるようにも思われます。
しかし、殺人罪は、危険な人を処罰することのみを目的としているのでしょうか、そうであるならば、殺人罪の条文は、「人を殺した」ではなく「人を殺そうとした」と規定されることになるのではないでしょうか。また、危険な人間であれば処罰すべきという観点からは、人形を人であると勘違いして人形にナイフを突き刺した人、人を呪い殺せるものと信じて呪いをかけた人も処罰されることになりそうですが、そのような結論は妥当なのでしょうか。
刑法の条件関係の問題は、非常に難しい問題ですが、興味をもたれた方は、是非、お聞きください。
以下は、補足事項です。
弁護士放送第2回冒頭で、ヨシカワが、裁判員裁判として裁判に出席した場合、裁判所からの日当以外に給与がもらえる旨の話をしています。ただし、有給休暇扱いとなるかは、会社の判断に委ねられていますので、裁判員に選ばれた方は、所属する会社にお確かめ下さい。
また、放送内で、ヨシカワが山本さんからの厳しい質問を受けて答えられなかった裁判員の管轄の問題ですが、原則としては、裁判員候補者は、居住している地を管轄する地方裁判所の本庁に呼ばれることになるようです。 でも、ヨシカワが選ばれるなら、天気の良い日に那覇地裁に行きたいです。
正直申しますと、最近、ヨシカワは、あまり刑事事件を扱っていないのです。民事事件とは全く別のやりがいが刑事事件にはありますので、もう少し業務に余裕がでてきたら、積極的に刑事事件もやろうかな。
なお、放送内で取り上げた熊撃ち事件とは、最高裁昭和53年3月22日第一小法廷決定のことです。