建物の貸し借りをする場合に当事者間で締結される契約を「賃貸借契約」といいます。

皆様の中にも、住居や仕事場として使用するために建物を借りたことがある方や、所有マンションを貸しているので毎月多額の賃料収入を得ているというリッチな方がいらっしゃると思いますが、このような場合に締結される契約が「賃貸借契約」なのです。

この「賃貸借契約」においては、①建物から退去する際に建物を傷つけたとして多額の補修費用を請求された(原状回復の範囲の問題)、②賃貸借契約が終了したので建物から退去したのに賃貸人が敷金を返してくれない(敷引特約の有効性の問題)、③賃貸借契約の期間を延長する際に更新料を請求された(更新料特約の有効性の問題)などといったことが問題となっていますので、皆様の中にも、賃貸人である大家さんともめてしまったという経験をした方がいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の放送では、賃貸借契約においてトラブルが生じることの多い原状回復・敷引特約・更新料についてお話させていただきます。

放送の中でお話させていただきましたが、建物を退去した場合、建物を借りた賃借人が原状回復義務を負うか否かを判断する際に、国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が参考になります。

なお、今回の放送を収録したのは平成23年7月なのですが、収録時点では、放送内においてお話しましたとおり、上記国土交通省のガイドラインが改訂中の状態でした。

しかし、その後の平成23年8月16日、確定版として、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)が国土交通省ウェブページにアップされていますので、必要な方は、同ガイドラインをご参照下さい。

国土交通省ウェブページは、以下のとおりです。

http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000060.html

この「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、あくまでガイドラインですので、具体的なケースにおいてガイドラインのみから原状回復義務の有無を判断することが困難な場合もございますし、原状回復義務の有無が裁判にて争われた場合、裁判所が必ずガイドラインに従って判断するとも限りません。そのため、トラブルに巻き込まれてしまった場合等には、弁護士等の専門家に相談することが望ましい場合もあります。

その他に放送では、敷引特約の有効性を判断した最高裁判決、更新料特約の有効性を判断した最高裁判決についてお話をしていますが、これらの判決の詳細は以下のとおりですので、興味のある方は読んでみて下さい。どの判決もインターネット上の検索サイトで検索をすれば、判決文を読むことができると思いますよ。

◇ 敷引特約の有効性を認めた判決

平成23年3月24日最高裁判所第一小法廷判決

平成23年7月12日最高裁判所第三小法廷判決

◇ 更新料の有効性を認めた判決

平成23年7月15日最高裁判所第二小法廷判決