現在社会が複雑化するにともなって、訴訟も専門化、複雑化する傾向があります。例えば、医療過誤訴訟、特許権侵害訴訟及び建築訴訟では、裁判の審理において、極めて、技術的・専門的な事項が問題となることがあるのです。

そのため、上記のような専門訴訟において、弁護士は、技術的・専門的な知識がなければ適切に紛争を処理することができません。

今回の放送は、このような専門訴訟のうちの建築訴訟に関するお話です。

なお、弁護士とは異なり、医師は、内科医、外科医等のように、自らの専門領域のみを扱っています(ただし、医師免許に制限はなく、法律上、医師は、全ての診療科における診療行為を行うことができるようです)。今後は、弁護士業界においても、建築訴訟専門弁護士、知的財産訴訟専門弁護士、医療過誤訴訟専門弁護士というように、各弁護士の取り扱う分野が限定されていくかもしれませんね。

今回の放送で、建物の不具合のことを「瑕疵」(かし)と呼んでいます。

「瑕疵」とは、何だか読むのも難しい言葉ですが、要するに、請負契約に基づいて建築された建物の不具合のうち、建物を建築した請負人が補修義務を負うことになる不具合のことを「瑕疵」と呼びます(以下の民法634条をご確認下さい。)。

(請負人の担保責任)
第六百三十四条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。

なお、放送の中で瑕疵に該当するか否かが問題となっていた壁紙クロスについては、以下の写真をご確認下さい。
写真で見ると、ひどく膨らんでいるように見えますね。

また、今回の放送の中で、山本さんは、あまりに酷い瑕疵が存在する場合には、建物を建築した請負人に対し、建物の建替えを請求できるのかとの質問をしていました。この点については、以下のとおり、最高裁判所の判例において、極めて例外的な場合に限り建替請求が認められるものとされています。

最高裁判所平成14年9月24日判決
「本件建物は、その全体にわたって極めて多数の欠陥箇所がある上、主要な構造部分について本件建物の安全性及び耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥が存するものであった。すなわち、基礎自体ぜい弱であり、基礎と土台等の接合の仕方も稚拙かつ粗雑極まりない上、不良な材料が多数使用されていることもあいまって、建物全体の強度や安全性に著しく欠け、地震や台風などの振動や衝撃を契機として倒壊しかねない危険性を有するものとなっている。このため、本件建物については、個々の継ぎはぎ的な補修によっては根本的な欠陥を除去することはできず、これを除去するためには、土台を取り除いて基礎を解体し、木構造についても全体をやり直す必要があるのであって、結局、技術的、経済的にみても、本件建物を建て替えるほかはない。」