皆様は、ウェブページや、もしくは、書籍の奥付に「ⓒ2018 HIROSHI」といった記載が存在することに気付いたことはないでしょうか。
今回は、普段、皆様が目にすることのある「ⓒ」との記載の意味をご説明させていただきたいと思います。
まず、「ⓒ」についてですが、「ⓒ」とは、copyright(著作権)の頭文字であり、一般に、「出版物の内容を無断で複製したり、改変したりするな!」との意思表示を示すものとして記載されています。要するに、「無断転載禁ず」との表示と同様の表示として使用されています。
ただし、「ⓒ」マークが付されていない記載は、無断で転載できるのかといえばそうではなく、「ⓒ」マークが付されていない記載であっても、それが「思想または感情の創作的表現」と認められる限り、著作権に基づき、第三者による無断転載を禁止することが可能です。
これは、著作権とは、著作物が創作されると同時に発生するものであり(著作権法第51条1項)、また、著作権を取得するためには、いかなる方式の履行も要しない(無方式主義、著作権法第17条2項)とされているためです。
このように、「ⓒ」マークを付さなくても著作権による保護が認められるにもかかわらず、「ⓒ」マークが使用されているのは、日本以外の他国には、著作権を取得するためには登録手続き等の方式の履行を要する国が存在するためです。
現在、世界の主要国は、ベルヌ条約という条約に加盟しており、ベルヌ条約加盟国間では、何らの方式の履行も要せずに、著作権は相互に保護されます(つまり、日本で出版された書籍は、ベルヌ条約に加盟した他国であれば、同国においても著作権が保護されることになります)。
しかし、著作権の保護を受けるためには、登録手続等の何らかの方式の履行が必要であるとする国において著作権の保護を認めてもらうためには、同国の方式に基づき、著作権の登録等を行わない限り、同国にて著作権の保護が受けられないことになります。
そこで、1952年に制定された万国著作物条約は、「ⓒ」マークを表示すれば、著作権の保護に何らかの方式を要求する万国著作物条約加盟国においても、同加盟国における方式の履行を前提とせず、著作権の保護を受けられるとしました。
そのため、日本においても、「ⓒ」マークが使用されるようになったわけですが、現在では、世界のほとんどの主要国は、著作権の保護にいかなる方式の履行も要しない無方式主義を採用しているため、海外において著作権を保護してもらうとの趣旨で「ⓒ」マークを表示する意義はあまり大きくありません。
むしろ、「ⓒ」マーク表示の意義としては、「著作権に違反する複製等は行なわないでね!」との注意を促すとの意義が大きいといえます。
日本では、そもそも、著作権との権利に対する意識は低く、著作権が何らの方式の履行も要することなく発生するものであるとの理解が広まっているとの状況にあるとはいえないため、ややもすると、「ⓒ」マークが記載されていない出版物は、自由に複製したり、改変したりしても問題はないと誤解される可能性があります。
このような誤解をした人達による著作権違反行為を事実上防ぐためにも、「ⓒ」マークは表示しておくべきといえるでしょう。
最後に、「ⓒ」マークの表示方法ですが、「ⓒ」マークは、著作権の保護を求める著作物の全ての複製物に、著作者名及び同著作物の最初の発行年度とともに記載する必要があります(例:「ⓒ2018 HIROSHI」)。